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「動物用ワクチン-その理論と実際-」書評

「動物用ワクチン-その理論と実際-」書評

            社団法人日本動物用医薬品協会 専務理事  伊藤 治

 本書を手にした第一印象は、動物用ワクチンに携わる者にとって、待ちに待った本が出版されたという喜びである。感染症対策にとってワクチンは最も重要な医薬品でありながら、その解説書がないため、これまでワクチンに対する正確な情報を総括的に知ることができなかった。そのような中、本書は総論、各論、将来展望からなり、まさに動物用ワクチンについての全てが凝縮された画期的な書である。
 総論では、ワクチンの歴史から始まり、ワクチンがどのように効くかを免疫学的に平易に解説してあることから、ワクチンの理論が容易に理解することができる。また、ワクチンを使用することの社会的・経済的有用性や多数あるワクチンをどのように使用すべきかというワクチネーションプログラムが示されていることから、使用者にとっても有益である。さらに、ワクチンの品質管理、許認可制度、諸外国の法規制とその調和についても解説されていることから、ワクチンの開発者にとってこれ程便利な書は他に見あたらない。
 各論では、現在実際に使用されている牛、馬、豚、鶏、魚、犬および猫の主要なワクチン86製剤について製造販売会社の専門家が解説している。全てのワクチンについて統一した記載、すなわち、対象となる疾病の概要、当該ワクチンの歴史、製造用株や製造方法、効果を裏付ける試験成績、臨床試験成績、使用方法、貯法・有効期間が簡潔にまとめられている。特に、製造用株の性状、有効性を証明する攻撃試験成績や抗体産生状況、野外での有効性や安全性を調べた臨床試験成績等、通常知る機会の少ないデータが多く記載されている点が大きな特徴である。更に詳細に知りたい者にとって参考文献が記載されている点も便利である。
 将来展望では、遺伝子組換え技術によるベクターワクチン、DNAワクチンや食べるワクチン等の開発状況、新規のワクチンデリバリー技術やアジュバントについて解説されており、今後のワクチン開発に示唆の富んだ内容となっている。
 一方、各論の所々に挿入されているコラムは、動物用ワクチンに関連した肩の凝らない内容となっており、拾い読みされることをお勧めする
 このように本書は、臨床現場で動物用ワクチンを使用する獣医師をはじめ、ワクチン開発・販売に携わる製薬企業の担当者、研究機関や大学の研究者、家畜衛生に携わる行政職員にとって必読の書であるばかりでなく、獣医学、動物看護学や動物衛生学を学ぶ学生にもお勧めしたい書である。

動物用ワクチン-バイオ
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